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「日本茶アンバサダーレポート from イタリア」Vol. 4 イタリアの製薬事情と緑茶普及の可能性

2016.11.07

イタリア日本茶アンバサダー

皆さま、ボンジョルノ!現地のお茶事情をお届しようとアンテナを張っていたら、なんと薬局で配布している今月のフリーペーパーに、緑茶特集があるじゃないですか!見開き2ページで緑茶の成分や効能を紹介していました。記事の内容はもちろんですが、薬局関係で入手した経緯から、ここはちょっと発想をふくらませて「イタリアの製薬事情と、緑茶普及の可能性について」考えてみたいと思います。いっけん堅そうなタイトルですが「へぇーなるほどね」と、雑学ネタにもなりますヨ♪

製薬関係のバイオテクノロジー、イタリアは欧州トップ3

「イタリアの主要産業はファッションと思われがちですが、じつは製薬もすごい」と東京のイタリア大使館はアピールしています。じっさい製薬産業に関してイタリアは、ドイツ、スイスにつづく欧州トップ3に入ります。山に囲まれたスイスかぁ。。。 ♪スーイース生まれーのぉ ハーーーブキャンディ!というメロディと、長い金髪の女の子が登場するハーブを使ったシャンプー(ティ〇テ)の映像が頭をよぎります。でも薬草研究に関して長い歴史があるのは、やはり修道院が普及しているドイツとイタリアです。ショーン・コネリー主演の映画「薔薇の名前」にあるとおり、修道院には知が蓄積されていて、中世から修道僧が薬草を栽培し調合した薬を市民に販売していました。日本でもフィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ薬局のアロマオイル、石鹸などが有名です。

さらに薬草の西洋史をさかのぼると古代メソポタミアから、エジプト、ギリシアに引き継がれ、古代ローマ帝国でも薬草研究がされています。つまりドイツよりもイタリアの方がはるかに薬草学の歴史は長いのです。それでもイタリアがナンバー1になれないのは、現在の投資が弱いから。。。スイス2位なのは、潤沢な投資に支えられているからです。ドイツ1位は納得ですネ。

「イタリアの伝統医学=薬草」にみられる、緑茶普及の可能性とは?

上述のとおりイタリアは欧州きっての薬草研究大国です。現在の製薬産業でも、化学薬品の調合より、薬草から発展させた自然派のバイオテクノロジー研究が盛んです。さらにエスプレッソなど日常的に嗜好飲料をとる習慣があります。けれどもイタリア人のすべてがエスプレッソ好きとは限らず、カフェインが苦手でカフェイン抜きのデカフェイナートコーヒーや、お茶を好む人たちも多いのです。

さて薬局配布のフリーペーパーでは、緑茶、紅茶、白茶、黄茶、赤茶、ウーロン茶、発酵茶のどれにポリフェノールが多く含まれていて、さらにカテキンも含む緑茶が最良と言い、ティーバッグタイプは質の悪い茶葉を使用されている場合が多いから茶葉を勧め、緑茶の淹れ方と温度を解説しています。また主要効能として、①コレステロール値の低下、②肥満防止、③心臓病のリスク減少、④皮膚細胞の活性化、シミや皮膚がん予防、⑤ボケ防止、記憶向上、⑥前立腺ガン防止が書いてありました。そして記事は「薬局でのみクオリティーの高い緑茶が入手可能」と結んでいましたが、さすがにこれは強引な宣伝文句です。。。一般的な薬局で販売しているのは有機栽培を称したものの所詮ティーバッグタイプで、量り売りの茶葉を扱っていません。

けれども「自然健康への関心の高さ」と「嗜好飲料をとる習慣」が根強いイタリアでは、健康問題に対する緑茶の効能を明確に発信していけば、緑茶普及の可能性は十分にあると思われます。たとえば季節の変わり目に体調を崩す、インフルエンザの予防注射は避けたいという人達に、殺菌と免疫力アップ効果があることを伝えてアピールするのも良いでしょう。

すでにスーパーの戸棚にはたくさん緑茶ティーバッグが陳列し、関心と需要があるのは明白です。これらの量産ティーバッグを買っている人たちが、茶葉で気軽に美味しく緑茶を味わえる方法も提案していけば、イタリアでの緑茶普及は高まること間違いなし!

それでは次回は、イタリアで見かける緑茶についてご報告いたします。

参考サイト:イタリアの製薬産業について

http://www.ambtokyo.esteri.it/ambasciata_tokyo/ja/i_rapporti_bilaterali/cooperazione_economica/scheda-paese/chimica_farmaceutica (日本語)

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1050_02_04.pdf(日本語)

http://biopharmaday.it/p/blog/post/italia-hub-farmaceutico-d%E2%80%99europa/id/97(イタリア語)

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《これまでの記事》
●Vol.1 子どもからお年寄りまで…初の日本茶!
●Vol.2 音楽と食で日伊交流
●Vol.3 日本映画に見る「お茶を飲む習慣」

この記事を書いた執筆者

吉田友香子日本茶アンバサダー

吉田友香子(よしだゆかこ)

ピサの日伊文化協会みらい 代表
横浜生まれ、三渓園がお散歩コース、隣が花見煎餅さんの工場という環境で育ち、祖母の影響もあってか、おやつにお茶漬けをすするシブ~い幼児でした。小学校時代は父の仕事の関係で中東アラブのクウェートに在住、小学生にして単身、バンコック経由の一時帰国を経験させられたのが、後の運命を左右することになったのでしょうか。様々な国の文化に触れるのが好きで、大学ではイタリアの都市史・建築史を研究、留学を経てピサ大学で博士号を取得。さあ帰国してアカデミック街道を進むかと思いきや、ピサ留学中に日伊文化協会みらいを設立して日伊の文化・学術交流に励んだため、遂にはイタリアで起業し、仕事と日伊交流にいそしむ現在に至ります。珈琲の国イタリアでも、健康に良い日本茶、和食への関心はとても高いのですが、残念ながら美味しい飲み方までは浸透していません。私自身も勉強して、イタリアで日本茶をより身近に楽しんで頂けるよう頑張ります!