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岐阜のお茶旅 vol.17_郡上八幡 城下町に栄えた茶道文化 町屋カフェ さいとう

2018.11.17

 

岐阜県飛騨高地の南部に位置する郡上八幡は城下町として古くから栄え、400年にわたって今も受け継がれる「郡上おどり」は活気あふれる夏の風物詩です。清流と名水で名高い郡上八幡は町中に水路が巡らされ、流れる水の音が心地よく響き渡ります。

 

 

郡上八幡に魅了された文化人は多く、漫画家 さくらももこ さんもその中の一人です。何度かこの町を訪れたさくらももこさんは、この町の素敵なキャラクターを描いています。さくらももこさんは、「頼まれてもいないのに勝手にキャラまで考えてみた。」と、語っています。名前は「GJ8マン」。水筒に入っている郡上八幡の綺麗な水が武器です。
さくらももこさんが語った町の様子です。「郡上八幡はちょっと観光地だけどみんな別に観光客を期待せずに日常生活を送っている。そこに美しい自然や街並みがあってもそれが普通なのだ。」
今回は城下町の風情と茶道の趣が心に響く素敵な和カフェをご紹介します。

 

 

郡上おどりの会場になる新町通りに、郡上八幡を代表する古い町屋、齋藤邸があります。現在は「カフェ・町屋さいとう」として、お抹茶が楽しめる空間となっています。
慶応年間(江戸時代末期)の建築物で国指定有形文化財、郡上市重要文化財に指定されています。

 

 

「カフェ・町屋さいとう」の店主、齋藤家11代当主の齋藤仁司さんです。町屋の活気と魅力が伝わるカフェをオープンして10年が経ちます。自ら接客をして下さる齋藤さんは、穏やかに、優しくお客様をお迎えして下さいます。

 

 

12畳の客間2室を構える商家の主屋がカフェスペースとなっています。

 

 

江戸時代末期の狩野探信が描いた雲竜図の屏風が拝見できます。

 

 

江戸時代から明治時代にかけて齋藤家は両替商として栄えました。

 

 

時代絵巻の屏風は優美で華やかです。

 

 

床の間には江戸時代中期の禅僧、白隠が描いた鶏竹図が掛けられ、江戸時代の古今雛の御殿雛飾りが置かれています。齋藤家の歴史を感じる美術品を鑑賞しながら、一服のお茶が頂けるのは、贅沢なひと時です。

 

 

 

町屋作りらしい中庭には樹齢180年の松が植えられ、その姿はとても美しいです。客間から突き抜けるように広がる中庭の風景は穏やかな気持ちになります。

 

 

心癒される一服です。お菓子は明治20年創業の「桜間見屋」の郡上銘菓、くるみ餅「宗祇」
ほんのり肉桂の香りがして美味しいお菓子です。

 

 

ボリューム感が欲しい時には、抹茶ぜんざいもお勧めです。焼き餅とあんこが抹茶とよく合います。

 

 

齋藤家が江戸時代より270余年にわたり茶人として代々蒐集愛用してきた書画、茶道具を中心とした美術工芸品を展示した「齋藤美術館」が併設されています。

 

 

江戸初期以来の大徳寺住職の墨蹟、楽家三代道入のんこう作「浅瀬」をはじめ、趣き深い茶道具の数々が展示されています。歴代の当主は茶道をたしなみ、茶道具類を京都の商人から仕入れていた様子で、その記録も残されています。1300余点が家宝として受け継がれてきました。これらの秘蔵の品は大切に保存され、人に見せないのが古い家のしきたりでした。秘蔵して守るよりも、多くの人々にその素晴らしさに触れて頂きたい思いから、齋藤美術館が開館されました。

 

 

美術館を出ると中庭に茶室「龍庵」とその脇には水琴窟があります。待合に座り、水琴窟の澄んだ水音の余韻に耳を傾けると心が穏やかになります。

郡上八幡は城下町としての文化を今も受け継ぎ、茶道をたしなむ方も多いと聞きます。その象徴として齋藤家の茶の湯文化が多くの人々を魅了しています。江戸時代の商家が茶人として、京都への憧に思いを寄せる心の高ぶりが今も伝わってきます。

齋藤美術館  カフェ 町屋 さいとう   岐阜県郡上市八幡町新町927
休館日 木曜日 (冬季休業  12月中旬~3月中旬 )

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。
●vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗
●vol.7_宗祇水に導かれて・・・お抹茶処 宗祇庵
●vol.8_郡上八幡 第13回 小那比茶 茶摘み・茶もみ体験
●vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会
●vol.10_西美濃に銘茶あり 美濃いび茶 茶山正
●vol.11_尾張名古屋のお抹茶ワールド お茶と抹茶スイーツの店 茶縁
●vol.12_岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑
●vol.13_有楽苑 国宝茶室 如庵  愛知県犬山市
●vol.14_Barスタイルで夏の白川茶を楽しむ。 カガミガハラ・スタンドで東白川村のお茶イベント
●vol.15_清らかな山の緑風が香る白川茶 東白川村 茶広農園
●vol.16_天空の茶園で茶の実油の魅力を伝える 春日乃売茶翁

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。