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岐阜のお茶旅 vol.23_郡上の美味しいお茶と昔ながらのお団子を召し上がれ 団子茶屋郡上八幡

2019.05.16

 

 

「岐阜のお茶旅」ではすっかりおなじみとなった郡上八幡。城下町として発展してきたこの町には風情ある街並みが残ります。古民家を改装して店舗や宿泊施設を開業する人が多く、空き家活用を促進するために地元の産業振興団体がサポートしています。
昨年11月にオープンした「団子茶屋郡上八幡」も「うなぎの寝床」と呼ばれる間口が狭く奥に長い古民家を改装して造られました。

 

 

「団子茶屋郡上八幡」の責任者、社会福祉法人 ぶなの木福祉会理事の大坪隆成さんです。
障がい者の就労支援と地域の活性化につなげることを狙いとして、日本財団と郡上市白鳥町の社会福祉法人ぶなの木福祉会は協働で、この「団子茶屋郡上八幡」を開設しました。

 

 

タウン誌の表紙を飾り、スタッフの働く喜びとお団子とお茶の美味しいコラボレーションに心が躍ります。

 

 

注文を受けてから丁寧に焼かれる郡上っ子が愛する名物、みたらし団子です。
郡上八幡で70年間愛され、昨年惜しまれつつ閉店した「みたらし団子屋」の店主の指導の下、見事に復活を果たしました。郡上産のお米を使い、地たまりを使った甘さ控えめのたれ。お団子は生地が滑らかで柔らかく、焼き立ての香ばしい香りは食欲をそそります。新しい試みとして、きな粉のトッピングサービスがあり、味にバリエーションが生まれます。

 

 

お茶はもちろん、郡上のお茶です。煎茶とほうじ茶の2種類があります。このコラムでも紹介した郡上八幡の「田中茶舗」のお茶を使用しています。煎茶は爽やかな風味で優しいうま味と渋みが調和しています。ほうじ茶はお茶の旨味と香ばしさがしっかりと感じられる、風味豊かな味わいです。

 

 

田中茶舗のお茶は郡上市の小那比(おなび)地区のお茶を使用しています。小那比は郡上市の町を抜け山の峠を越えてたどり着く隠れ里のような長閑な土地です。

 

 

茶畑も民家もすっぽりと山々に包まれています。茶畑を吹き抜ける清らかな風に空気の美しさを感じます。小那比では一番茶だけを摘採します。

 

 

郡上市「小那比」のお茶を販売する郡上八幡の「田中茶舗」です。ほうじ茶の美味しさに魅せられる人が多く、郡上八幡の旅館や飲食店にも多く使われているので、観光客がその美味しさにふれ、買い求めに来る人も多いです。「田中のほうじ茶じゃなきゃ。」と言う郡上人も多く、地元の人達から愛される美味しいお茶です。

 

 

「団子屋茶舗」の飾り棚には、美濃焼の抹茶茶碗と郡上のお茶が拝見できます。団子茶屋の内装は、郡上八幡の昔から受け継がれる暮らしの中の伝統や文化を散りばめて、ギャラリーのように店内を演出しています。

 

 

「うなぎの寝床」と呼ばれる町屋の作りの風情を残しています。レトロなガラスが美しいです。

 

 

箱庭から明るい陽の光が差し込みます。

 

 

箱庭に置かれた水舟です。水舟は郡上八幡特有の水利用のシステムです。湧き水や山水を引き込んだ二層または三層からなる水槽のうち、最初の水槽が飲用や食べ物を洗うのに使われ、次の水槽は汚れた食器などの洗浄に使用します。そこで出たご飯つぶなどの食べ物の残りはそのまま下の池に流れて飼われている鯉や魚のエサとなり、水は自然に浄化されて川に流れ込むしくみになっています。滴り流れる水音に耳を傾けると、心地よく心が落ち着きます。

 

 

町屋の特徴である吹き抜けには、美濃和紙に絞り染めした「郡上本染」が飾られています。

 

 

2階の内装もモダンなレトロ感にあふれています。町屋の漆喰壁、飾り壁、くどの左官、家具や建具、庭の植栽、水舟、ガラス、和紙張貼など、店舗の改装は郡上の技術者が手掛けました。

 

 

受け継がれた生活と文化が新しい設えとなり、心地よさに満たされるお茶の時間が愛おしく感じます。
伝統の継承の仕方も働き方のスタイルも新しさを感じます。「団子茶屋郡上八幡」の責任者、大坪さんは郡上の自然の美しさと伝統文化を伝えるとともに、障がい者にこだわらず、引きこもりや高齢者、シングルマザーなどの働きづらさを抱えた人達の就労支援も視野に入れ、地域の中で楽しく働ける職場づくりを目指しています。

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。
●vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗
●vol.7_宗祇水に導かれて・・・お抹茶処 宗祇庵
●vol.8_郡上八幡 第13回 小那比茶 茶摘み・茶もみ体験
●vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会
●vol.10_西美濃に銘茶あり 美濃いび茶 茶山正
●vol.11_尾張名古屋のお抹茶ワールド お茶と抹茶スイーツの店 茶縁
●vol.12_岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑
●vol.13_有楽苑 国宝茶室 如庵  愛知県犬山市
●vol.14_Barスタイルで夏の白川茶を楽しむ。 カガミガハラ・スタンドで東白川村のお茶イベント
●vol.15_清らかな山の緑風が香る白川茶 東白川村 茶広農園
●vol.16_天空の茶園で茶の実油の魅力を伝える 春日乃売茶翁
●vol.17_郡上八幡 城下町に栄えた茶道文化 町屋カフェ さいとう
●vol18_名古屋栄のお抹茶専門店 茶々助 お抹茶を味わう日
●vol19_近江茶の老舗 中川誠盛堂茶舗 日本最古の茶園のお茶が蘇る「日吉銘茶」
●vol20_伊深の里から、新たな発信。日本茶と日本古典芸能の世界へ。茶霞(さか)O’carre(オキャレ)
●vol21_伝統の美濃白川茶をスタイリッシュにアプローチ 美濃加茂茶舗
●vol22_美味しい「いび茶」を求めて 岐阜市の老舗 明治屋茶舗

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。