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岐阜のお茶旅 vol.24_岐阜の南西端の美しい里山 美濃上石津茶 平塚香貴園

2019.06.17

 

新茶の茶摘みが終わった6月のはじめ、大垣市上石津町の平塚香貴園をお訪ねしました。
上石津町は岐阜県の南西端に位置し滋賀県と三重県に隣接しています。町の東西を養老山地、鈴鹿山脈の山々に囲まれた自然豊かな美しい町です。平塚香貴園の平塚一さん、眞由美さんです。ご夫妻の二人三脚で、茶園業を営んでいます。眞由美さんは、茶育指導士、日本茶販売アドバイザー、岐阜県女性農業経営アドバイザーの認定を受け、イベント出店、ワークショップの開催などを通し、日本茶の美味しさ、素晴らしさを伝えています。そして、日本茶アンバサダー5期生です。

 

 

ゆるやかな山の斜面に150a(アール)の茶畑が広がります。この日は曇り空でしたが、清らかで爽やかな空気が流れていました。

 

 

山の茶畑を下ると、田植えを終えたばかりの水田が広がっています。

 

 

茶畑の彼方には養老山地が見えます。

 

 

鈴鹿山脈も美しく視界に広がります。茶樹栽培に適した赤土で昼夜の寒暖差があり、深い霧が立つことから、美味しい茶葉が育ちます。
平塚香貴園は昭和33年に創業し、自社茶畑で生産した茶葉を自社工場で製茶加工しています。有機肥料、減農薬栽培です。平成15年度から「岐阜クリーン農業」への登録を得ました。近隣市町で生産された有機肥料である「おがくず」「椎茸の排菌床」「稲わらロール」を活用しています。現在栽培している茶樹の品種は「やぶきた」が中心となり、「あさひ」「こまかげ」「くらさわ」「やまかい」です。「あさひ」は黒い遮光布を一週間ほど茶樹にかぶせる「かぶせ茶」の栽培方法をとっています。

 

 

令和元年、平塚香貴園の新茶を頂いてみました。爽やかで渋みが少ないです。まろやかな優しいうま味が心地よく、すっきりとしたハーブを思わせる後味です。平塚香貴園では一番茶のみを使用しています。

上石津町では、奈良時代からお茶づくりがが行われてきたと言われています。上石津町から北へ車で20分ほど進むと、関ヶ原、不破の関跡にたどり着きます。

 

 

不破の関跡の近辺は、奈良時代672年、古代日本最大の内乱と言われる「壬申の乱」の
戦場となった地です。不破の関は古代東山道の関所の一つで「壬申の乱」の翌年から関所として設置され100年の間、治安維持のため畿内と東国との間の通行を厳重に監視しました。壬申の乱の頃、都がおかれていた大津に近いこの地は、都の文化が伝わりやすい地域だったかもしれません。大津からは比叡山も近く、その麓、坂本には最澄が唐から持ち帰った茶の実を植えたとされる最古の茶園が残っています。このことを考慮すれば、この地に奈良時代からお茶づくりが行われた話の想像が膨らんできます。
上の写真は、不破の関跡に残る史跡で、大海人皇子(のちの天武天皇)が壬申の乱の時、兜を掛け沓を脱いだ石「兜掛石・沓脱石」が残っています。民家の畑の中にあり、その小さな畑には茶の木が植えてありました。

 

 

平塚香貴園では、多くの人がお茶に親しんで頂けるよう、お茶の加工食品に力を注いでいます。茶をパウダー状に加工した緑茶の粉末茶とほうじ茶の粉末茶です。インスタントコーヒーのようにお湯を注ぐだけで美味しい日本茶が出来上がります。お菓子やお料理、アレンジティー、カクテルなど、気軽に利用できます。粉末緑茶は渋みが軽く、後味がすっきりとしています。クセがなく飲みやすいので、抹茶の渋みが苦手な方でも美味しく飲めそうです。粉末ほうじ茶は、焙煎の香ばしさが心地よく深みのある味です。どちらも風味豊かな粉末茶です。急須を使わない若い世代にも簡単に日本茶を淹れることができます。コーヒーや紅茶のようにミルクを加えると、さらに飲みやすくなります。
「関ヶ原の戦い」をイメージした戦国武将のパッケージで、大垣市や関ヶ原のお土産品として喜ばれています。緑茶の粉末茶は島津豊久。ほうじ茶の粉末茶が石田三成です。

 

 

平塚香貴園の近くにある「関ヶ原の戦い」で命を落とした名将「島津豊久」の墓は、今も大切に守られています。

 

 

関ヶ原にある石田三成の陣跡「佐尾山」の登り口です。三成は大垣市とゆかりが深く、大垣城を戦いの根拠地としました。

 

 

粉末ほうじ茶を茶筅で点ててみました。泡がまろやかな風味になります。
「石田三成」のお茶にまつわる逸話「三献茶」を思い出します。近江の国で、秀吉が鷹狩りの帰りに観音寺に立ち寄った時の話です。秀吉は寺付きの小姓にお茶を持ってくるように伝えました。その小姓は、はじめは大きなお椀で、ぬるめのお茶をたくさん入れて持っていきます。喉が渇いていた秀吉はお茶の美味しさに喜び、おかわりをします。すると小姓は、少し小さめの碗にやや熱めのお茶を入れてきます。秀吉がまたおかわりをすると、小姓は小さな碗に熱々のお茶を少しだけ入れて持ってきました。この小姓が三成です。お茶の出し方に感心した秀吉が三成を召し抱えたと言われています。三成がお茶のパッケージになるとは、ただならぬお茶の繋がりと縁を感じます。

 

 

粉末茶をさらに加工した「茶のタブレット」は新商品です。ほんのり甘くお茶の味も爽やかでリフレッシュ効果が期待できます。この商品の開発、販売で、農林水産省東海農政局から「六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画」の認定を受けました。

平塚香貴園のお茶は上石津町のアンテナショップや観光スポットの「奥の細道むすびの地記念館」「関ヶ原駅前観光交流館」JR岐阜駅アクティブG内の「THE GIFTS SHOP」名古屋市のオアシス21内の「清流の国ぎふg.i.Foods(ジ・フーズ)」などで販売しています。安全で美味しいお茶造りの伝統を守り続けるとともに、新しい視点で親しみやすいお茶をアプローチする平塚香貴園の今後の展開がとても楽しみです。人との繋がりを大切にし、地域の活性化に貢献する平塚ご夫妻の優しさが伝わる美味しいお茶に出会いました。

平塚香貴園 岐阜県大垣市上石津三ツ里355

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。
●vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗
●vol.7_宗祇水に導かれて・・・お抹茶処 宗祇庵
●vol.8_郡上八幡 第13回 小那比茶 茶摘み・茶もみ体験
●vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会
●vol.10_西美濃に銘茶あり 美濃いび茶 茶山正
●vol.11_尾張名古屋のお抹茶ワールド お茶と抹茶スイーツの店 茶縁
●vol.12_岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑
●vol.13_有楽苑 国宝茶室 如庵  愛知県犬山市
●vol.14_Barスタイルで夏の白川茶を楽しむ。 カガミガハラ・スタンドで東白川村のお茶イベント
●vol.15_清らかな山の緑風が香る白川茶 東白川村 茶広農園
●vol.16_天空の茶園で茶の実油の魅力を伝える 春日乃売茶翁
●vol.17_郡上八幡 城下町に栄えた茶道文化 町屋カフェ さいとう
●vol18_名古屋栄のお抹茶専門店 茶々助 お抹茶を味わう日
●vol19_近江茶の老舗 中川誠盛堂茶舗 日本最古の茶園のお茶が蘇る「日吉銘茶」
●vol20_伊深の里から、新たな発信。日本茶と日本古典芸能の世界へ。茶霞(さか)O’carre(オキャレ)
●vol21_伝統の美濃白川茶をスタイリッシュにアプローチ 美濃加茂茶舗
●vol22_美味しい「いび茶」を求めて 岐阜市の老舗 明治屋茶舗
●vol23_郡上の美味しいお茶と昔ながらのお団子を召し上がれ 団子茶屋郡上八幡

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。