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岐阜のお茶旅 vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶

2017.10.20

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茶畑に秋風が心地良く吹き抜け、すすきの美しい穂がふわりと優しく揺れます。今回も岐阜県の東部、加茂郡東白川村のお茶のお話をお届けします。

昔からお茶を造り続けている東白川村。江戸時代、貞享元年(1684年)の年貢通帳には藩への御用茶を収めた記録が残っています。近代になると機械化が進み、お茶造りに変化が生まれます。昔ながらの製法が消えていくのです。機械化によって少ない労力で、早く作業が進むのはありがたい事ですが、人の手でお茶を造る時間の流れの中で生まれる工程が消えてしまうのは、寂しさを感じます。

東白川村や白川町では、機械化によって消えかけている製茶の工程の一つを復活させたお茶を造り、その魅力を伝えています。その工程は「萎凋(いちょう)」と言う作業です。
萎凋とは、収穫した茶葉を風通しの良い暗所で12時間~15時間ほど放置する工程です。昔は土間で茶葉を萎凋していました。その間、数回、茶葉を持ち上げて広げます。茶葉が萎(な)えることで、微発酵が促され、華やかな香りを生む茶葉が生まれます。萎凋は中国や台湾では、烏龍茶を造る時、必ず行う作業です。この萎凋によって、烏龍茶は茶葉本来の香りとは異なる、フルーティーな香りやフローラルな香りが楽しめるのです。

製茶の機械化が進むと、摘まれた茶葉は間もなく蒸して製茶される事が可能になり、茶葉は鮮度が大切にされます。茶葉本来の新鮮な香りが日本茶の香りとされるのです。
東白川村、新世紀工房、茶蔵園(さくらえん)の茶師、田口雅士さんは茶農家で育ち、幼いころからお父様のお茶造りを見て育ちました。お家では、摘まれた茶葉を一度に製茶することができないため、土間に茶葉を広げて、萎凋をしているのは当たり前の事でした。その時の家中に広がる茶葉の馨しい香りが体に染み込んでいるようです。昔は、茶農家では当然のように行われた作業が、機械化が進むと、消えていきました。今となっては、萎凋は手間と時間がかかる、特別な作業となったのです。

 

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昔ながらのお茶造りの復活として、多くの方に、東白川村の萎凋の香りのお茶を楽しんでいただきたい。田口さんは8月の末、今年の春に萎凋で造られたお茶2種類、昨年のお茶1種類をブレンドして、今年の萎凋のお茶「はなやか」と言う銘柄の仕上げを始めました。摘採時期や畑が違うだけで、荒茶の味の印象が異なります。幼い頃から萎凋の香りに包まれて育った田口さんがブレンドして下さる事がとても嬉しく感じます。新世紀工房でブレンドされる3種類の萎凋のお茶を見せて頂きました。ほんのり甘く爽やかな香りがします。確かに、3種類とも香りが違います。摘採時期が早いものは爽やかで、昨年の茶葉は芳醇な香りです。

 

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秋分の日を迎えた頃、今年の萎凋のお茶「はなやか」が販売されました。お茶と言えば、新茶のシーズンを好む人が多いと思いますが、夏を越し、少し時間を置いた熟成の味を感じて頂く秋のお茶も美味しいです。秋の美味しい味覚、栗やサツマイモなどのお菓子と一緒に楽しみたい秋のお茶が出来上がりました。

 

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東白川村の萎凋のお茶「はなやか」は水出しでも香りが立ちます。爽やかで清々しい味わいで、ソフトなうま味を感じます。ワイングラスで頂くと、香りがより華やかです。お菓子よりお食事との相性が良く感じるお茶です。前菜や魚介料理とのペアリングがお勧めです。白ワインのように楽しみたい煎茶です。水色も黄緑かかった黄金色で白ワインを連想させます。急須で淹れる時は、熱めのお湯、80℃ぐらいで、抽出時間は少なく40秒ほどで淹れると、香りが立ち、すっきりとした渋みも引き立ちます。渋みが穏やかなので、あんこの甘い和菓子より、岐阜の「栗きんとん」や「鬼まんじゅう」など、甘さが控えめで、素材の味を生かしたお菓子が良く合います。

 

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岐阜の「栗きんとん」は「おせち料理」にある「きんとん」ではなく、栗を裏ごしにして、少量のお砂糖で味を付け、茶巾絞りにした素朴なお菓子です。岐阜の美濃東部、中津川市や八百津町が有名です。栗が多く収穫できた時には、お家で、手作りする人も多いです。同じ地域から生まれたお茶とお菓子の相性はベスト・ペアリングです。

 

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「道の駅 茶の里 東白川」の体験茶房「極み」では東白川村の煎茶を飲む事が出来ます。茶室の露地風に作られたアプローチの奥に静かな喫茶室があります。

 

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5月の新茶の頃、品評会に出品するためのお茶を造る製茶工場を見せて頂きました。笑顔で和やかにお茶を造る村の人達の事を思い返しました。品評会に出品される高価なお茶「極み」を頂けるのは、とてもありがたい事です。この煎茶は非売品で、ここでしか味わえないのです。東白川村の最高峰のお茶の味を体験する素晴らしい機会です。とてもまろやかで、濃厚な味の煎茶です。上品なうま味の余韻が長く続きます。

 

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「道の駅 茶の里 東白川」で販売されている茶蔵園(さくらえん)のお茶のパッケージは、「茶の実」をあしらったデザインです。前回のコラムでご紹介した白川茶の歴史を表しています。450年ほど前に、蟠龍寺(ばんりゅうじ)の住職が京都の宇治から茶の実を持ち帰り、参道の石垣に植え、里人たちに栽培を奨励したのが、お茶造りの始まりです。その茶の実に感謝の思いを込め、引き継がれていくお茶造りに思いを馳せながらお茶を頂けることは、とても幸せなことです。

次回は東白川村で有機栽培のお茶造りをしている五加茶生産組合を紹介いたします。

道の駅 茶の里 東白川 公式サイト
http://oishii22.jp/
道の駅 茶の里東白川 茶蔵園(さくらえん)
http://oishii22.jp/sakuraen/

 

 

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやし のりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。