ENJOY!日本茶

ホーム
コラム
> 岐阜のお茶旅 vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会

岐阜のお茶旅 vol.9_美濃焼の旅 土岐市 織部の日のお茶会

2018.03.17

01

 

茶道を試みる方にとっては、美濃焼は魅力のある焼き物の一つです。
今回は、茶の湯文化から発展をとげた美濃焼をたどる旅をご紹介します。
美濃焼は岐阜県東農地域、土岐市、多治見市、瑞浪市、可児市に跨る地域で制作されます。
食器類の生産量が全国シェアの約60%を占めています。

第30回土岐市「織部の日」記念事業で3月3日、4日、織部の里公園にある茶室「暮雪庵」でお茶会が開かれました。織部の里公園内には、国指定遺跡「元屋敷陶器窯跡」作陶体験ができる「創陶園」茶室「暮雪庵」があります。茶室「暮雪庵」は平成16年、松坂屋の創業家である伊藤家の別邸「揚輝荘」(名古屋市千種区)から移築されました。茶室では土岐市茶華道連盟によるお茶会が定期的に行われています。

 

02

 

今回のお茶会は、「織部の日」として、特別なお道具を使った味わい深いものでした。
土岐市では、織部焼が史実に登場した1599年2月28日を記念して、毎年この日を「織部の日」と制定し、記念事業を行っています。お茶室での写真撮影ができないため、残念ながら、お茶会の様子はご紹介できませんが、この日のお道具は、土岐市美濃陶磁歴史館に所蔵されている16世紀~17世紀の貴重なものばかりで、その写真が下になります。

 

03

 

私は写真右上の志野茶碗(16世紀~17世紀)でお茶を頂くことができました。滑らかな感触で、温かみがあり、優しく手に馴染むお茶碗でした。美濃桃山陶の華やかな茶の湯文化に思いを馳せながら、心地よい緊張感がお茶室にも流れ、心ときめく時間を味わえました。この日は、待合で学芸員さんがお道具の説明をして下さり、それぞれのお道具の特徴や鑑賞のポイントを学ぶこともできました。

400年前に思いを馳せ、織部の里公園内にある国指定遺跡「元屋敷陶器窯跡 連房式登窯」を見学しました。桃山時代、美濃地域は日本最大のやきもの産地でした。ここで生産された陶器は全国へと出荷されました。元屋敷窯は美濃窯最古の連房式登窯で当時の姿をよく留めています。

 

04

 

連房式登窯は焼成室が複数重なっていることが最大の特徴です。また、焼成室内で均質な温度を保ちやすいことから、安定的な銅緑釉の焼成が可能となり、元屋敷窯では最盛期の織部が焼かれました。16世紀後半、畿内を中心とした「茶の湯」の流行の影響を受け、美濃窯において茶陶、美濃桃山陶の生産が盛んになったのです。

 

05

 

「織部の里公園」から徒歩5分の場所にある土岐市美濃陶磁歴史館では、元屋敷窯の出土品が展示され、美濃焼の歴史を感じながら、様々な作品を見ることができます。写真撮影が可能だったものを一部ご紹介します。

 

06

 

黒織部茶碗(17世紀初頭)
織部焼は桃山時代の武将、古田織部(重然)の指導によって創始されたと言われています。このような素敵な織部が先ほど紹介した連房式登窯でたくさん焼かれたかと思うと、ワクワクします。古田織部は千利休の弟子でもあり、利休の亡き後、天下一の茶人となり、独創的で斬新なデザインの茶道具をプロデュースしていきます。「ひょうげもの」(風変わりなもの、ひょうきんもの)を編み出したアートセンスは桃山の気風を感じます。奇しくも織部は利休と同じように、天下人に切腹を命じられます。命を懸けて茶の湯の世界を創造していった力強さを織部焼に感じる事ができます。

 

07

 

志野茶碗(16世紀末~17世紀初頭)
美濃産のもぐさ土に長石釉を厚くかけてゆっくり焼き、ゆっくり冷まして作られます。日本人が作り出した初めての白い焼き物です。筆による絵付けが始まったのも、志野焼からでした。日本人が憧れた唐物(中国産)の白磁や染付の写しとして表現された焼き物です。国宝八茶碗の一つ志野茶碗「銘卯花墻」(三井記念美術館蔵)はあまりにも有名です。この茶碗は牟田洞窯で焼かれたとされ、この窯跡は土岐市の隣の可児市にあります。国宝八茶碗のうち日本で焼かれた茶碗は二つのみで、その一つが志野茶碗「銘卯花墻」です。もう一つは本阿弥光悦の白楽茶碗(銘不二山)です。

 

08

 

美濃桃山陶の歴史に触れた後は、現代の美濃焼を楽しみたいですね。
「道の駅 志野・織部」では、気軽に美濃焼を楽しむことができます。

 

09

 

千円台で購入できるお抹茶茶碗がずらりと並んでいます。

 

10

 

立派なお茶碗も揃っています。

 

11

 

織部と鼠志野の茶器セット。見比べると楽しいです。

「道の駅 志野・織部」の近くに、美濃焼の卸問屋直営店が並ぶ「織部ヒルズ」があります。飲食用食器生産日本一の土岐市。その北部に土岐美濃焼卸商業団地があり、一般のお客様向けの小売店が約15店舗あります。今回は、その一つの「喜楽庵」を訪ねました。

 

12

 

喜楽庵を経営する金正陶器株式会社 四代目 代表取締役 澤田敦史さんです。140年の歴史がある金正陶器は、伝統的な作家作品の紹介とともに、業務用食器を幅広く開発しています。

 

13

 

喜楽庵のギャラリーに並ぶ陶芸作家の志野茶碗です。

 

14

 

骨董品のコレクションもいろいろありました。そして、お庭の向こうには茶室があります。
ギャラリーでは、お庭を眺めながら、お抹茶やコーヒーを頂くことができます。

 

15

 

澤田社長に茶室を案内して頂きました。

 

16

 

17

 

茶室には志野焼のお道具が並びます。毎年5月の連休、3日~5日には日本3大陶器祭りの一つ「土岐美濃焼まつり」が開催され、このお茶室ではお茶会が開かれます。
織部ヒルズ内は歩行者天国となり、テントも並び、普段は一般公開していない倉庫もオープンします。

 

18

 

喜楽庵でこの日、私が購入した「おおぶり碗」です。左の「織部削りおおぶり碗」には和紅茶。右の「黒土刷毛目おおぶり碗」にはお抹茶を点ててみました。おおぶり碗はお抹茶茶碗より少し小さく、野だて茶碗ほどの大きさです。喜楽庵さんに「おおぶり碗」についてお尋ねしたところ、東北地方では大ぶりの碗に麦茶や番茶をたっぷりと入れて楽しむそうです。「お茶以外にも、冷たいデザートを盛り付けても素敵ですよ。」とアドバイスして下さいました。お茶碗の楽しみ方にイメージを膨らませ、いろいろなお茶を淹れてみたくなりました。美濃桃山陶の茶の湯文化の歴史に触れ、現代のお茶碗や茶器を楽しむ。時の流れを感じながら、丁寧に、美味しいお茶を淹れる喜びを味わっています。

 

*織部の里公園・土岐市美濃陶磁歴史館  土岐市泉町久尻
*道の駅 志野・織部  土岐市泉北山町
*織部ヒルズ 喜楽庵(金正陶器株式会社) 土岐市泉北山町

 

《これまでの記事》

《これまでの記事》
●vol.1_見渡せば、山、山、山。山の中の岐阜のお茶
●vol.2_清らかな山の恵み。美しい村、東白川村のお茶
●vol.3_美濃白川茶発祥の地に残る いにしえのお茶
●vol.4_東白川村 昔ながらの秋のお茶
●vol.5_東白川村 五加(ごか)地区の無農薬の茶畑で・・・・。
●vol.6_郡上八幡の人々が愛する美味しいほうじ茶 田中茶舗
●vol.7_宗祇水に導かれて・・・お抹茶処 宗祇庵
●vol.8_郡上八幡 第13回 小那比茶 茶摘み・茶もみ体験

この記事を書いた執筆者

平林典子日本茶アンバサダー

平林典子(ひらばやしのりこ)

「Lacue チーズ・お茶・ワイン」の教室を運営。セミナーやイベントを開催。煎茶道黄檗松風流師範。チーズプロフェッショナル(CPA認定)ソムリエ(JAS認定)中国茶インストラクター(ロ・ヴー認定)茶道の季節を愛でる思いを大切に、気軽に楽しく、美味しく、自由な発想でお茶を楽しむ教室やお茶会を開催しています。