お着物を着ようと思う時、まず迷うのはお着物の種類ではないでしょうか?
お着物に馴染みがない方でも、例えば、浴衣、振袖、白無垢、結婚式に参列すると新郎新婦のお母様方が着てらっしゃる留袖・・・色んなお着物を目にする機会はあったと思います。
はて、どのシチュエーションでどんなお着物を着るべきなのか?
お着物の種類も素材や柄によって細かく分かれていて、一度に説明しようと思うと何頁にも渡ってしまいますので、今回は身近なシチュエーションで着る機会がありそうな4種を取り上げます。
●訪問着
フォーマル度:★★★
シチュエーション:結婚式参列、お茶会、フォーマルなパーティー全般
裾と胸、袖に柄が描かれている染めの着物。
しかも、縫い目で途切れることなく柄が描かれている絵羽模様という華やかな柄付けです。
紋をつけるとさらにフォーマル度は増し、準礼装として使うことができます。
柄は洋花や幾何学柄といった洋風なものから、古典的で豪華なものまで様々です。
●色無地
フォーマル度:★★(★)
シチュエーション:お茶会やパーティー全般、慶弔時にも使用可
その名の通り無地のお着物(布の地模様はあり)で、黒以外の
一色で染められています。
一般的には紋を1つつけると略礼装として使え、紋が無いと
カジュアルになります。
(紋を5つつけると訪問着よりもフォーマル度が上がります。)
よって帯合わせなどによっても用途、印象はかなり変わってきます。
弔事の時は喪の黒の帯を合わせて。
また色無地と同格とされることが多いのが「江戸小紋」。
元々は武士の裃から発展し、細かい柄で染め、遠目には無地の
ように見えるお着物。ただし、その柄の種類によって、また色無地と
同じように紋がついているかどうか?で、フォーマル度が変わります。
●付け下げ
フォーマル度:★★
シチュエーション:柄にもよるが、披露宴、お茶会、食事会、観劇など。
少し改まった場所へのお出かけに。
このお着物はとっても説明が難しいのですが、お店でお着物選びするときには
よく出てくるので、図解にしてみました!
付け下げは、元々訪問着を簡略化し、小紋を少し格上げしたものとして、戦後普及しました。
小紋は上下の向き関係なく柄付けされているのですが、付け下げは柄が全て上向き。
訪問着は絵羽模様ですが、付け下げは反物の時点で柄付けを終えるので、縫い目を渡って
柄がつながることはありません。
こんな経緯で出来ただけに、柄や帯の合わせ方で工夫できる応用範囲の広いお着物です。
ただ、別名「付け下げ小紋」「付け下げ訪問着」と呼ばれるものがあることで分かるように、
両者の間を取って出来たものなので、柄によっては果てしなく訪問着に近いもの、果てし
なく小紋?と思えるようなものもあり、さらにお店それぞれの解釈もあります。
もうこれは作った人や呉服屋さんが仰るのを聞かないと判別できないという、曖昧な着物の種類。
ただ、この「付け下げ」という言葉を聞いた時に、こういうものだな・・という事だけ把握しておいて
頂ければOKではないか、と思っています。
●小紋
フォーマル度:★(★)
シチュエーション:カジュアルなお茶会やパーティー、食事会や観劇にも。
柄の種類や大きさを問わず、お着物全体に柄が入った染めのお着物。
正装以外のところなら大体のところに着て行ってOKと言える、初心者に
とっては一番用途の広いお着物になるかと思います。
よって、行き先や相手によって、合わせる帯を変えればきちんと感、
カジュアル感を演出することもできます。
(ただし、太い縞や格子柄はあくまでもカジュアル用途)
●紬
フォーマル度:★シチュエーション:食事会、観劇、日常着
織りのお着物。柄は写真のような格子柄から無地まで様々。
日本全国各地で生産されて、その土地ならではの風合いが魅力。
本来は日常着でしたが、今は上等な紬はコーディネート次第では
正式な場に行くこともできるとも言われています。(結構な力量がいりますが汗)
つまりはそれだけ自由度が高く、一番コーディネート力を試される、
いや楽しめるお着物ではないかと思っています。
お着物の種類によって、今度は帯や小物類の合わせかたも変わってきますので、
初めは戸惑うことが多いと思います。私も未だに迷って頭を悩ますことも多々・・・
でも、そんな時はお洋服と同じ!
その場と相手のことを考えて選べば、大きく間違えることはないと思います。
まずはざっくりとした基本のルールだけ頭に入れておきましょう!
<絞りの帯のコーディネート>
この記事が掲載される7月は既に夏着物の時期ですが、その一歩手前の6月は
単(ひとえ:裏地の付いていないお仕立て)になります。
ただ、最近は暑いので5月から単を着る方も多く、もれなく私も6月に入る前から単に。
そして、この時期に活躍するのが、とても軽い絞りの帯。
単の着物として最適なシャリ感のある塩沢紬に合わせて、見た目だけでも爽やかに・・・。
そして、帯枕も暑苦しいので、この時は銀座結びっぽい帯結びにしてみました。
近藤あや(こんどう あや)
遠州流茶道師範、着付け師 祖母が一年中着物を着て過ごしていたことから、幼少より着物に親しむように。茶道や時代衣裳の勉強をしながら着物への理解を深め、撮影やブライダルの着付 けで経験を積む。シンプルで楽な着付けをモットーに、ファッションの選択肢の一つとして着物を着てもらえるよう、着付けを教えるかたわらコーディネート相 談や、帯のお仕立て等も行っている。